10分か20分の真実の瞬間

 私のような人事や人材に関するコンサルタントをやっていてうれしいことがひとつある。クライアント企業における、研修や会合の後、見計らったように、「ちょっとよろしいでしょうか」と尋ねて来る人がいることである。たいていは部下をたくさん持っている部長や課長であり、要するにその組織の中ではばりばりやっている脂の乗った人たちだ。しかし、部下の活用や育成に悩んでいる。それをズバリ相談したいわけだ。

 少しだけ説明が要る。実は、たいていの場合、質問に来たその人自身と、その部下を、私もある程度、場合によってかなり知っている。私も前職時代に比べると独立後は、ひとつの会社にて、人材改革なり、組織風土改善なりが結実するまでじっくり見届けるというか、支援申し上げることが多くなった。要するに、その会社の老若男女のキーパーソンと、コーチングや面接やその他の研修にて、濃い密度にて行き来をする。

 だから、そういう場面でも、「最近彼(彼女)の言動にこういうことがあったのですがどう思われますか」と問われ、私はあまり余計な質問をせずに、多くの場合すぐさま本題に入れる。

ただしこういうときはまた、次の旅程の移動が差し迫っていることもまた少なくない。ぎりぎりの時間まで、なるべく濃縮して相談するように心がけている。

 人材の育成指導に関し、原則論を述べる書物とセミナーは、星の数ほどあるのであろう。この私も実はそのごく末席を汚すひとりに過ぎない。しかし、この世でただひとつの、上司と部下とその組織の組み合わせの中に起きてくる事柄には、原則論だけ述べても、全く役に立たないというわけではないが、どうももどかしい。

また、当事者の苦衷を、私の側が共有していなければ、踏み込んだ助言はできない。それにはふつう時間がかかるのだが、この場合その前提が上述のように概ね整っている。その基盤の上で、具体的に速やかにホンネで意見交換ができる。つまり、この種の話の場合、たいていは相手(部下)の能力や意思の問題にしてもしかたないので、「上司であるあなたが今できることは何か、今やっていることはほぼ妥当か。」という本題に互いにずばりと踏み込めるわけだ。

そうした真実の瞬間───たいていは20分以内くらいだろう───こそ、何やらコンサルタント冥利に尽きる気もする。

私が最も長い時間を費やすのは、手法の研究開発や著述ではなくて、何よりもクライアント企業の方々との接触である。そこで得られた背景、脈絡、マネジメントの環境そして当事者の本心と動機などの分析である。そうしたことに、たぶん私は同業の人たちよりずっと多い割合の時間をかけているのだろう。

その末の結びとしての、この10分か20分の対話が、相手の心に色々なものが深々と響いてゆくことがあるのだとしたら、これが学者の言う、私のささやかな内発的動機に基づく自己実現なのかも知れない。

コンピテンシー面接の活用

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