実戦問答No.18


どのような考課要素がよいのか~人事考課要素と社員の活性化の関係~
(2011.7.01)

人事考課に関する課題でお悩みの会社は多いと思う。
 
かのコーチングの神様、ゴールドスミスのホームページをのぞくと、フリーに読める彼の基本的な考え方に関する論文が10編ある。その中で、人事考課、業績評価に関して彼の言及が2カ所あり、とても面白いので、ご紹介したい。前後関係も含め意訳すると以下のような趣旨である。
 
「多くの会社で、ひどく厳密に業績評価フォームづくりを毎度のように行っていると思う。実際、多くの社員達の労力が評価フォームの言葉づかいを完璧なものとするために用いられていると思う。なんとむだなことであろうか。社員達の業績が向上するようはかるよりも、書式づくりにエネルギーが投じられているのだ。私が関与したある会社では、これまで少なくとも15種類もの異なった業績評価フォームを用いてきた。そしてなお、変更改訂を企図しているのである。なぜなら、現在のフォームが、『うまく機能していない』からなのだと言う。もし、書類上の言葉を変えて業績管理プロセスが向上すると言うなら、どんな会社の評価システムだって、これまでにもうとっくに完全なものになっているはずではないのか。事の成否は、いかなる時も、書類上の言葉でなく、人々そのものにあるのだ。」
 
「多くの会社で定期的に業績評価表を改訂していることと思う。こうした業績評価フォームの変更は、管理職達を混乱させるだけで、無益な年中行事と化しているように思える。フォームをいじると物事がどうにか前向きに変わるのだろうか。真の問題は、マネジャー達が、評価プロセスを正しく機能させるための強い意思と勇気を欠いていることなのである。」  

彼は言うまでもなく、コーチングの神様だから、人事考課のプロジェクトなどあまり手がけたことはないに違いない。しかし、以上のように論じていると言うことは、よほどこっけいに思ったからだろう。
 
ひるがえって、私は、人事考課を含めた広い意味での人材評価のセミナーや研修会を行うことが多い。そうした中でしばしば質問を受けるのが、端的に言えば、「これからはどのような考課要素がよいのか」と言う点である。それに直接答えるなら、「普通に設計するのがいちばんよい」と言うしかない。普通に、とは、能力、成果、情意などの配分バランスを、自社流に階層別に素直に考えればよいので、こうしたところで奇をてらうとまず必ず失敗する。「能力と言うよりはコンピテンシーと言った方がよいのでしょうか。」とか「情意と言うのは古いので、役割行動と表現した方がよいでしょうか」などとも聞かれる。実はそのようなことはどちらにしても実効に差は生じはしないのだ。カタカナが好きならそうすればいいし、素直な日本語の方がしっくり来るならそちらを選べばよいと言う好みの問題に過ぎない。そんなことでかんじんの上司たちの評価力、指導力が左右されるわけがない。つまり社員の活性化とは関係ないことだ。だからそうした議論はほどほどで止めないといけない。その上で続ける。
 
「今日のように情報があふれている時代には、どんな会社でも、まずもって明らかに誤った考課要素の選択、設計はしていないものです。大切なのことは、もはや考課要素の選択ではなくて、人材評価の理念を活かす運用なのです。そのためには、上司自身が、期末に考課表が配られた時だけでなく、日常の中で、評価、育成、動機づけにどれだけ関与できるかが肝要です。同じ部下を、2年3年と預かったら、評価は正確につけたが、能力は最初の頃と変わっていないと言うのでは困るのです。会社としての人事考課の課題は、新奇な評価要素の浸透などではなく、そこなのです。その課題を解決するためには、実戦的で定期的な人事考課者訓練などが非常に重要となります・・・・・」
 
さらにこう加える時もあった。
 
「だいたい成果主義の失敗例とされる会社は、人事考課要素を入れ替える頻度が高かったものです。そうしょっちゅういじっていると、ライン部門の方は、わけがわからなくなってきてもう勝手にやってくれよ、とだんだんしらけてきます。人事部門とライン部門にもしも反目が起きれば、どんな最新鋭、崇高な人事制度、評価制度も絶対に成功しません。長い組織というものの歴史の中で、人事考課要素を精密に研究したから社員が活性化したと言う例はありません。大切なのは社員を使いこなすリーダーの能力の方です。」  そんな中で、何年前か、上記のゴールドスミスの論文を読んだときは、誠に我が意を得たりと思ったものだった。
 
人事部門の優秀なスタッフは、どうか、書式や概念の研究はほどほどにして、自組織の社員の活性化そのものに向けてそのエネルギーをうまく配分して欲しいと思う。ライン部門のマネジャーに方々は、人事部のつくった書式のできばえいかんによって、じかにあなたの部下の動機が上下するなどと思っている人はまずいないだろう。そう、目の前にいる部下がやる気になるかならないかは、あなたの方が人事部の何百倍も責任を負っているのである。人事部や教育部は、マネジャー達の、その代わりのきかない使命遂行の支援をすることが、この場合、もっとも大切な役割だと思う。その支援のしかたは、今ここで数百文字にて意を尽くすことはできないので、いろいろな折りにご質問頂けたらと思うし、また機会を改めて論じて行きたい。

 


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