実戦問答No.25


人材マネジメントと管理職処遇の考え方 
(2011.11.24)

このテーマは、最近実施するセミナーで、受講者の方々にもほぼ共感を頂いているようなので、ここで改めて述べたい。

堀紘一先生に「ホワイトカラー改造計画」と言うすぐれたご著書があった。私の記憶の中では、管理職の処遇をもっと厚くせよと初めて強く説いた書物でもあった。1994年の発行である。あの頃は、バブルがはじけてどこの企業も経費節減に躍起になっていた。そんな中で、事業運営のかなめとなる管理職たちの意欲を削ぐような措置は取るべきでないし、むしろより手厚く配慮すべきであると言う文脈だったと思う。

 
あれから17年、わが国の相対的国際競争力は下がったかも知れないが、国富や1人あたりGDPが結局減ったと言うわけではない。が、管理職の処遇はどうだろうか、堀先生のご唱導のようになっただろうか。むしろ、管理職と非管理職の扱いの差がますます少なくなったように感じられる。人間平等論からの是非は別にして、こうしたことが組織の人材マネジメント上にどんな影響を与えただろうか。私はやはりマイナスの影響の方が多かったと思う。他方、それを上回るほどの収益力改善効果があったのかは、どうもよくわからない。

数年前に日経ビジネスが、各社で活躍中の管理職直近の係長、専門職クラスにアンケートをしたことがあった。設問は「あなたは管理職になりたいですか」である。当然ながらアンケート先は大手企業、一流企業が多かったはずである。それなのに、なんと6割近くの人が管理職にはなりたくないと答えた。もちろん理由はさまざまだが、「なったところでたいして処遇が厚くなるわけではないし、形式的な仕事に振り回され専門的なことに打ち込めなくなるのだから。」と言うところが最大公約数ではあったと感じている。

もちろんこうした問いを新入社員に聞いても意味はない。もうちょっと手を伸ばせば管理職に届くと言う人に聞くから意味がある。

読者の会社ではどうだろうか。もし8割以上が「すぐなりたい」と答えるようなら、まずは活力ある組織と言ってよいだろう。

能力、気力の伴った人材が、責任ある地位に就きたくないなどと言うのは、これほど残念なことがあるだろうか。本人にとっては与えられた才質の空費であり、会社にとっては大いなる機会損失である。専門職と言う別な枠組みもないではないが、そのことは別な機会に述べたい。

先日私はあるクライアントに研修のお手伝いに出かけた。その研修と言うのは、管理職候補者として認められた人だけが受講を許される不定期のものである。だから人によってはずいぶん待たされていたはずだ。教室に行くと、既に開講前から熱気がひしと伝わる。それはこの機会を逃してなろうものかと言う強い意思が多くの人から発せられ、体感気温を高めたに違いない。こうした雰囲気が私は好きだし、実際健全でもある。当然ながら研修もたいへん活発な展開に終始した。

全然別な時に別なある会社では、文字通りだが、「ある係長に管理職になるよう内示したら、なりたくないと言うのでどう説得したらよいだろうか」と言うご相談を受けた。なかなかこう言うのは難しいし、何より相談者も私も意気があがらない。二人ともホンネは「なりたくないなら無理になってもらわなくていいのだよ」と言いたいし、おそらくそれが本来の筋道だからだ。が、少なからぬ会社でそのように単純に割り切れない事情があることもまた現実である。

こんな相談を受けることもある。管理職の賞与配分で、成績評価の比重を高めると、簡単に言えば、一時的にせよある課長がたとえば別部署の部長のボーナスを追い越してしまう例が見られ、どう考えたらよいか、と。わかりやすく極端な例を言う。たとえば基本給60万円の部長が、評価Bで2カ月120万円の賞与とする。基本給45万円の別部署の課長が、評価Sで3カ月、135万円となると言うような話である。


これをどう考えるかは、最初に制度設計した時の考えがどうであったかによる。ただ、ご相談者としては、改めて、それが本当に貢献度を正確に表現しているのか、と言う意味だろう。


こうした問題を考える時の前提として、何度もそう言う「うわぶれ現象」を起こす課長なら、なぜさっさっと部長にしないのかと言うことである。人材の序列間のフローのフレキシブル度増加は、人事改革の必須要件だろう。能力がある者は、昔よりは速やかに認めたらいいと思う。


そこまでするほどではないなら、一時現象と思って看過するのも一法である。ただ、違う人どうしでの組み合わせではこの現象はいつも生じるからやはり面白くないと言う話にもなる。


結局多くの場合、単純に言えば部長と課長の月給の差、正確に言えば管理職の各グレードの基本給のピッチ(較差)が小さいからこう言うことになる。だからその物理的には較差を拡げれば「問題」は解消する。どう拡げるか。上下に拡げるのが会社にとっては腹が痛まないから都合がよい。しかしまずそれは無理だろう。上に拡げるのはよいが下に拡げたら、管理職の初任時点の基本給が、社員、組合員の最高の基本給を下回ってしまうに違いない。いや、現実には、多くの企業で、既にここは少し重なってしまっているのだ。既に下回っているのに、いっそう下回らせたら、なおいっそう有為の社員が管理職になりたくないと思ってしまうではないか。では上にだけ拡げれば、会社の腹が痛む。本当に困ったことだと言う話になるわけだ。

「管理職の処遇をもう少し見直した方がよい」(むろん改善向上の意である)と言う提言が出される確率は、私がお手伝いを依頼された場合には低くない。

この場合、「では現在の管理職全員がそれにふさわしいか」と問われることもある。確かにそういう面もある。現実には、残業代節約をホンネとして管理職扱いになると言う例もないとは言えない。


それやこれやを考えて、地道に一歩一歩、本来の役割と重い責任を果たしている管理職の処遇向上を図りたいものだ。 

力のある人が、それにふさわしい責任を持ち、処遇を受ける。続く人たちは、自分もそうあやかりたいと思って努力する。ごく素直に、健全な活力ある組織と言うのはそう言う状態だと思うが、私の頭の中がいくらかクラシカルなのかどうか、読者の皆様のご意見をお聞きしたいものだ。



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