実戦問答No.17


そんなふうにはっきり認めてめてくれたのは先生だけですよ~マネジャーのオアシスとしてのアクションラーニング~ 
(2011.06.20)

ある会社のアクションラーニングセッションに出かけるために、前年のその会社のセッションのメモを見返してみた時のことである。するとこんなやり取りが書いてあった。

「そんなふうにはっきり認めてめてくれたのは先生だけですよ。」

その時のその人の、日々の現実と向き合うマネジャーらしい表情を思い出した。あの人はどうしているのだろうか。

もう少し前後関係を書いて置こう。

要するに彼の問題は、主力となる数名の部下の育成であった。1度目のセッションでそれを提示し、2度目のセッションで、その後の経過を語った。まあ表現がこう言ってはなんだが、一度目に聞いた部下たちの様子は、いささか自立心や向上意欲を欠いていた。かつ、それを改善しようとするには、上司である問題提示者の行動があまりにも性急で高望みであり、部下にとっては負荷がかかり過ぎていた。それを他のメンバーから質問され、気づかされ、深くふり返った。その後、より堅実な育成行動に切り換え、かつ一層上司としても、彼らの悩みの次元に降りていってそれを共有するよう努めた。その結果、部下たちに、ずいぶんと自律的な行動が増えた。その雰囲気が、2度目のセッションで、私を含む他のメンバーに強く伝わった。

「部下の方々の意識がずいぶん変わったようですね。」

「そうです。手応えを感じています。」

「どうしてそう変わったのですかね。」

「いや、それは・・・・・」

「それはあなたのほうが変わったからでしょう。」

他のメンバーがうまく合いの手を入れてくれた。こういう雰囲気はまさしくオトナのマネジャーのセッションである。さらにこう言っては失礼だが、この問題提示者は、典型的な厳父型のマネジメントに見える。だから、よく短期間にそこまで行動を変えられましたね、と皆思ったことだろう。全く教科書に書いてある通りの情景だ。「人を変えようと思ったら自分が変わらねばならない。」しかし、この言葉を知っただけで自分を変えられる人はめったにいない。アクションラーニングはそれを実現する一法ではある。このように仲間の共有と支援があって人は変わりうる。

「ええ、まあ・・・・・」

少し照れ笑いをしている。私だっていいトシをして他人様に、あなた変わりましたねなどと言われたらさぞ恥ずかしいことだろう。

「ただ・・・・・」

「はい。」

「部下の意識が変わったことを、そんなふうにはっきり認めてめてくれたのは先生だけですよ。」

「はあ・・・・」

今度は私が黙らなければならない。

「先日、担当役員に成果の現れ方が遅いと言われましてね・・・・・」

お顔に「今、変化の途上なのだからあわてないで欲しいと言いたかったのですよ」と少し悔しさがにじむ。しかしそう言えば余計混乱するかも知れない。マネジャーの任務と言うのは、半分が忍耐なのだろう。特に彼の担当部署の仕事は足の長い仕事であり、現在の成果がいつ努力した結果なのか、今努力したことがいつ成果に結びつくのか、簡単に捉えることはできない。いや、現代の少しはまともな組織の中の仕事なら皆そうである。

そうした脈絡の中で、緩衝、防波堤としての苦しい役割をマネジャーは果たす。そう言うことを何年かやると、苦しさは消え、むしろそうした日常こそが、本質そのものとも感じ、おのずとマネジャーらしい風格とお顔になる。アクションラーニングは、こうした時、旅路の途次のオアシスとなる。他にもいろいろあるが、これは重要な効用のひとつである。仲間の支援の気持ちあふれた質問は、オアシスの木陰で汲んで飲む水である。その味は、一生忘れないかも知れない。彼もきっと上記の様子をよく覚えていることだろう。マネジャーだって誰にも言えないことがあり、それを吐露すれば、また勇気がわくと言うものだ。

「・・・・・」

全員黙るしかない。それもほんの数十秒だった。本人は、すぐまた、からりとしたお顔に切り替わっていた。

「今の部署もあと何年かでしょうから、それまでどれだけ人を育てられるか、ですね。」

「・・・・・あなたのご苦労は、ここにいるメンバー全員がみな共有しました。」

「そう、それを心の張りにしてもう少しがんばってみますよ。」

あの人は、今も苦闘しながら、少しずつ人を育てているのだろうか。



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