その29:18の標準マネジメント能力要件…ストレス耐性①初級的段階

(2012.05.01)

最近、ごく若手の研修を時に引き受けて感じるのは、日本人のストレス耐性の平均点が、たとえば私が新入社員だった時と較べたら明らかに下がってきたのではないかと言うことだ。

原因は単純ではないだろう。


情報技術の進歩、人手不足と人件費高止まりで、かつてより、新入社員で入った時からいきなり難しい仕事をさせられることが増えたから、若手にストレスがたまっていると言われる。不思議なものだ。昔は、ITが恐ろしく不備だったから、それゆえの下積みのつまらない仕事が山ほどあって、それを日々耐えるストレスは相当なものであった。私の同世代の方々が若手社員だったころは、いかにしてこの下積み仕事から脱するかが、たいていの人の実践的目標ではなかったか。


他方、上司のほうが年功主義の時代のように時間的ゆとりがないから、ついつい部下にがちがちに枠にはめた行動や、厳しい成果管理を求めると言う面も感じられる。より正確に言えば、上司の力量や包容力の個人差がくっきり現れてきたようにも見える。それにしても若手にとっては、最初の頃に当たった上司次第である。あまり度量のない上司にあたってあれこれがちがちに言われると、一般にストレスに過敏になる。つまり視野が広がらない。

それと、やはり感じるのは、少子化やゆとり教育のせいなのだろう、若手自身が評価や競争に慣れていないと言うことだ。ちょっと相手に評価的なニュアンスを嗅ぎ取ると過敏に反応してしまう。


こうしてみると、作家の渡辺淳一先生の「鈍感力」と言う造語は本当に見事なネーミングだった。鈍感なだけで会社の中で成功するわけではないが、ここに述べたようなどちらかと言えば事柄にはあまり敏感でないほうが、少なくとも健康にはよい。


特に最後の、若手自身の側の点である。残念ながら、この世は評価と競争から逃れられる日は1日もない。つまりストレスのかからない日は1日もないので、ストレスから逃れるのではなく、どう処理し扱うかが問題である。言い方を変えれば、ストレス耐性は慣れの問題に過ぎないとも言える。だから本当は少年期から親によって取り組まれるべきことだろう。慣れなのだから、早く慣れてしまえばよいのだ。たとえば、「計画組織力」を鍛練しようとしたら、マネジメントの場に身を置くことが不可欠だが、ストレス耐性は、子供の頃からの日常生活でいくらでも向上可能である。が、おとなになって急にそれに取り組むと、とてもつらいことになる。


人間世界では力量相応に勝ったり負けたりするのが当たり前なのだが、負けて自分の非力さを見るのがいやだと言う人が昔より目立つわけだ。こうした態度の持続は、一般にその人のキャリア向上に益しない。だから勝ったり負けたり、負けた時にはくやしくて眠れないことも時にあるのがあたり前なのだと早く慣れたほうがよいに決まっている。


ストレス耐性がある意味で重要なのは、これが弱い人は、ストレスがかかった時には、他のよい持ち味まで消してしまうと言うことだ。要するにあがりやすい、緊張しやすいタイプの人は、本番で本来の力を出しにくいと言うことである。それならまだ他人様には迷惑を掛けていないが、たとえば緊張するといらいらしてやたらと他人に攻撃的になるような現れ方をするパターンもある。どんな上司でも、そういう部下を重要な局面で使おうとは思わないに違いない。つまりストレス耐性が弱いと、仕事を有効にこなせる範囲がその分狭くなる。それも程度によっては極端に狭くなる。


あの名物監督野村克也氏は、選手が長髪にしたり、ピアスを着けたりすることをひどく嫌った。「野球選手は野球で目立てばよい。野球で目立てないから他のところで目立とうとするのは全く間違っている」といつも著書に述べている。これなども私の分野から見ればストレス耐性が弱い行動のある種の典型例である。だいたいにおいてサラリーマンの世界もいっしょで、会社の中での奇抜なファッション、容装は、概ね上記と同じと見てよい。いたずらに奇をてらう言行もまたほぼ同じである(前稿の積極性との区別は多少専門的観察を要するにしても)。

 


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