その14:他者からフィードバックしてもらうこと

(2011.11.15)

■その自分の行動について他者からフィードバックしてもらうこと

次に、その自分の(面接演習の)言動を他の受講者がビデオを見て観察する。当然いろいろなことに気づくだろう。それを本人に伝える。これはお互いに行なうから「相互フィードバック」と言う。体験学習の第二要素がこれである。自分で気づいた事柄とは少々違う内容を指摘されるのが常である。それが正しいとか正しくないと言うことを論じてもあまり意味は無い。なぜならビジネスマン、マネジャーにとって大切なのは、真意や動機が何であったかを論じるよりも、自分の行動が他人にどう映ったかを知ることだからである。と言うよりそれがすべてだ。あなたの言ったことは相手が理解した範囲でしか影響を及ぼさないからだ。
 
これもふだんなかなかできない。
 
昔の上司はこう言ってはなんだが、ずいぶんひまだったから、部下にこんこんとお説教をする時間があった。1時間お説教されたとして、私の経験上、7、8割はむだな話なのだが、2、3割はなにがしかの的を得ていて部下の血肉にずっと残るものだ。それがここで言う相互フィードバック当たっており、OJT(オンザジョブトレーニング)と呼ばれた。むだのほうの7、8割と言うのは、たいていすでに前提となる状況が変化してしまった上司の昔の自慢話である。が、そういう話をじっと耐えて聞かねばならないと言う意味では、あの時代(つまりは年功主義の時代)の人間形成、修養の一法だったのだろう。しかし今日そうひまな上司はいない。また上司の方で忙しい中で部下の指導をしようとしても、部下はもっと忙しい。読者が部下を持っていたとしたら、部下の行動上の難点に気づくたびに注意している人はあまりいなだろう。それでは混乱して仕事にならないからだ。と言うわけで、日本企業からOJT(オンザジョブトレーニング)の機能がそげ落ちてしまったと言われ出してから既に久しい。よって、こうした研修での相互フィードバックの重要性がかえって増したのである。
 
上司ですらそうなのである。まして同僚が、日常の業務遂行において、他の同僚の不具合な言動、行動に気づいたからと言って、指摘などしないだろう。そう言う行動を取る人は、よほど変わった人だと思われてしまう。もしも全くの善意でそうした助言が行われたとしても、現実の利害をかけて任務を遂行している時に、そのような指摘を誰しもそのままおいそれと受け入れることは相当に困難である。
 
研修のケーススタディは、現実感はなければならないが、現実そのものではない。だから現実の利害をひきずってきてはいない(そこが360度評価、多面評価にない大きな利点である)。だからこそ、自分がどんな行動を取ったかを相互に指摘しても、素直に受け入れる素地が形成されているのである。
 
関連してもうひとつ大切なのは、動かぬ証拠を示せること。この場合は、面接のビデオである。現実の場面ではいちいちそんなになまなましい記録は取らないから、何かあとで指摘されても「そんなこと言ったっけ」となってしまえば啓発やふり返りは生じない。
 
ところで、私は長年この仕事をしていて、人の成長の遅速は何が分かれ目かといつも考えるのだが、この点が存外重要と思えてならない。資質優秀と思われていながら、5年たっても10年立っても昔とあまり変わらないと言う人があなたのまわりにいないだろうか。そういう人は、たいてい、他人からのフィードバックを素直に受け止めないか、受け入れを拒むような姿勢が強いものだ(スティーブ・ジョブズのような、天才肌の信念居士は全く別論である)。そういう人は、他者からのフィードバックを、正しいとか誤っているとか、評価をしたがる。
 
フィードバックと言うものは、他人が感じた事実をそのまま伝えるから意味がある。人がそのように感じたと言う事実によいもわるいも、ましてや正しい、誤っているなどと言うことはないのだ。そのような事実が愉快でないときがあるのは誰しも同じだ。が、それを正面から受けとめられる人は一般に成長が速い。


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