その33:18の標準マネジメント能力要件…インパクト

(2012.8.27)

■インパクト

 

人に強い印象を与える能力である。対面影響力とも言う。

 

どんなになかみの良いことを言ったとしても、印象に残らなければ決してそれが実行に移されることはない。つまりその人にとって成果が上がらない。たとえば会議を開いて多くの人が発言する。肩書による影響は別にして、不思議と何を言ったか記憶に残る人とそうでない人がいる。前者の方が目的を達する上で有利なことは明らかだろう。そこでふつうは、懸命にキャッチフレーズを練ったり、きれいな資料をつくる。もちろんそうしたものは、インパクトの補助具なのだが、そうした工夫に富むのは、どちらかと言えば創造力分析力の守備範囲である。マネジメント行動としてのインパクトは、基本的には、人間そのものの存在感である。

 

どうしたらインパクトを高めることができるのか。

 

第一はキャリアである。

 

例えば西郷隆盛のような人がインパクトが強いと言うことは誰でもわかる。ではインパクトとは彼のように、巨顔巨躯とならねば得られないのか。そうだとすればインパクトはまったく天与の資質となり、学びようがない。しかし、西郷のインパクトの本質は、彼の高潔な人格、至誠一貫な信念、他人をいたわる仁慈から生じているのである。ただ巨躯であるからと言って大勢の有能な明治維新の志士たちが彼につき従うはずがない。そしてその本質の方は、どう考えても生得のものではなく、大変な克己と努力つまりキャリアに依ったものである。

 

このように、私たちのまわりにいるいわゆるインパクトの強い人は、例外なく、そうした自助のプロセスを経てそのようになったはずである。そこにマネジメント能力要件としての意義がある。

 

ではなぜ西郷はそのように高潔な人格たり得たか。無数の要因があるとしても、最も重要なのは、彼が若年時に志を得ず、奄美大島、沖永良部島と、二度も島流しにあったことである。特に環境劣悪な二度目の遠島から鹿児島に戻った時の西郷は、誰が見ても別人の観があったのではないか。その間彼は、自己の生死と向き合い、放下(ほうげ)の境に入り、天の命ずるところを待った。そして天はあたかも彼のそうした変容を待っていたかのように、革命家としての使命を改めて西郷に与えた。

 

西郷と言えば、相棒は大久保利通である。この人のインパクトは、一般論で言えば西郷には及ばないだろうが、やはり常人を抜きんでる水準ではあったようだ。会う者をしておのずと粛然とさせる威厳は、まさしく「静かなること林の如し」と言う強いインパクトを人に与えた。西郷のインパクトがどちらかと言えば、慈愛からもたらされる親和性インパクトの典型とすれば、こちらは威信性インパクトの典型だろう。

 

大久保のこれもまた生得のものではない。むしろ青年期までの大久保は、胃弱でむしろひよわな印象すら与えたかもしれない。彼が私たちの知る大久保利通へと変容を遂げてゆくのは、父親が藩の政変に連座して役職を解任され、一家が塗炭の苦しみにあってからである。

 

より多くの艱難辛苦、今日風に言うなら自らリスクを取ったキャリアを、より多くくぐりる抜けるほどインパクトは向上するようだ。

 

キャリアは、ただ年数が長ければ良いと言うものではないが、あまりにも短期間では形成できないのは明らかである。

 

そこで、第二に、すぐに取り組めることはないかと言うことになる。

 

自分の言った言葉に信念を込める、自分が心を込めたことしか言わない、自分の言葉が相手に届くよう深く意を用いる。これならそう思ってそうすればよいのだから今日からでもできる。言い方を変えれば、思いつきをすぐ口にする、長々と不必要な説明をする、と言った行動がインパクトをとても削いでしまうことは明らかだろう。言葉に信念を込めるには、深い思案が必要である。深い思案がこもった短い言葉と揺るぎの無い冷静な態度がインパクトを形づくる。もっともこうした時に「感受性」のない人だと誤解されないように気をつけなければならないが。

 

最近はテレビに政治家や経営者がたくさん出てくる。こうした信念が言葉にこもっているかどうかは、われわれ国民の目から見ると、キャスターの質問が適切である限りは、彼らの表情、反応の言動からたやすくわかるからテレビと言うのは便利である。つまりは、それがインパクトである。

 

男子は四〇才を過ぎたら自分の顔に責任を持たなければならないと言ったのはリンカーンである。一般にマネジャーの顔には、上述のようなキャリアの集大成が、ありありと現れている。その度合いがインパクトなのである。

 

塩野七生先生の作品に「男の肖像」と言うのがある。「中年以上の男の顔を観察するほど面白いものはない。」と言っていた。「それは美醜の問題ではなく、その人の生きざまそのものが現れてるからなのだ」と言う。塩野先生に観察されてはたまらないが、インパクトと言うことの本質が良く現れている。


 


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